舞台『君死ニタマフ事ナカレ零』観劇記 16/12/25

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    この年の瀬、今年最後の観劇に行きました。

    場所は、西新宿にある「新宿村LIVE」です。

    新宿村LIVE
    君死ニタマフ事ナカレ零』という、クリスマスに観るにはちょっと重い(笑)
    タイトルのこの作品に、まっつんが出演するということで伺いました。

    『君死ニタマフ事ナカレ零』チラシ

    この作品、スクウェア・エニックス社の「月刊ビッグガンガン」誌にて連載中の、
    君死ニタマフ事ナカレ』という漫画の前日譚的な物語に当たります。
    ゲーム業界的な判りやすい話をすると、『ドラッグオンドラグーン』や
    『NieR』シリーズ(まっつんもファンだと公言している『Replicant』や『Gestalt』
    のほか、最新作『Automata』の話題で最近また活気付いてます)のディレクター・
    ヨコオタロウさんが原作を務めている漫画作品で(作画は森山大輔さん)、
    『君死ニ零』でも舞台原作を書き下ろしていらっしゃいます。

    えぇ、ヨコオさん原作ということで、ぬるゲーマーである私も大体の予想はついてました。
    実は君死ニの漫画も、試し読み第1話で主要登場人物が残虐な殺され方をされたシーンが
    駄目すぎて、本屋でお勧めされてる既刊3冊を買う勇気が未だ出せずにいるところですw
    それでも「舞台であの世界観をどうやって出すんだろう」という興味に湧きながら、
    劇場へ足を運びました。

    新宿村LIVE入口

    劇場はこの建物の地下にあったのですが、チケットカウンターまで続く長い階段の途中に
    沢山の祝い花が飾られていました。

    『君死ニタマフ事ナカレ零』公演花

    『君死ニタマフ事ナカレ零』公演花

    まっつん、愛されています。

    劇場へ入り、指定席に座り、開演を待っていると。
    客席減灯とともに流れたのは、『赤鼻のトナカイ』のオルゴール。
    最初は軽快に流れていたのですが、徐々に音が歪んでいきふっと消音。
    その直後また軽快に流れたかと思いきや・・・グシャッという鈍い音とともに潰れました。

    ライトが灯された舞台の上にはふたりの少年少女と、少年を睨みつける女。
    主役のサクラとハクジの独白から、物語が始まりました。
    そこに続けて、うなだれる子供たちのシーン、ただ事ならない大人たちのシーンが
    意味深に畳み掛けられ、怒涛のオープニングへと繋がっていきます。

    『君死ニタマフ事ナカレ零』オープニング
    (画像はYouTubeより拝借)

    登場人物・キャストの紹介を兼ねたこのOPで一糸乱れぬダンスが披露されましたが、
    そのなかで自衛隊員達がブーツとライフルの底を打ち鳴らすサビが非常に印象的でした。
    子供たちの青春に「軍靴の音が響く」という暗喩でしょうか?
    そして曲中盤で子供たちが灯した蝋燭(を模した豆ランプ)が消える演出があったのですが、
    実は灯りの残ったメンバーと物語のラストに大きな関連があったことを後で知り、
    改めて表現の小憎たらしさ(超賛辞)を痛感。

    このオープニングダンスのみ、YouTubeでも公開されていますので、
    ご興味のある方は是非ご覧くださいませ。

    こうして、物語は動き出しました。

    『君死ニタマフ事ナカレ零』ティザー

    ここで、結末のネタバレにならない程度に物語の概略を。
    舞台は「超能力」の科学的解明が進んだ、でも開発までには至っていない世界。
    未成年にしか発現しないその能力を「憲法9条や非核三原則に当たらない」と言い張り
    軍事利用すべく、素質を持ち且つ様々な事情を抱えた中学3年生の少年少女たちを集め、
    投薬・訓練・研究を続けている富士山麓某所での物語です。
    子供たちは国家軍事機密として、本名を名乗ることすら許されていません。
    そんな中で厳しいながらも青春を謳歌する彼らの明るい表情が、前半では描かれました。

    キャラが立っている・・・というより、ある意味アクの強い9人の生徒たちと、
    それに困惑しつつも暖かく見守る新橋教官の、奇妙な連帯関係。
    そこに、特殊能力研究班の女性メンバー3名の軋轢や、研究者・蘇芳の気持ち悪い情熱、
    そして子供たちの訓練相手となった陸上自衛隊攻撃訓練班5名の困惑が対比して描かれます。
    それらが接近したり、交差したり。大人たちの中にはは自らのプライドと建前、
    もしくは上からの圧力などと折り合いをつけなければならない者もいて、鬱積します。
    反面生徒たちは、能力開発に疑問を持ちつつもそれぞれ前を向こうとしていました。
    そこへやって来たのが、別の場所で訓練をしていた10人目の生徒・サクラ。
    暴力少年・ハクジとは幼馴染の間柄で、とある事情で離れ離れになっていた関係でした。
    このふたりのやきもきする恋愛感情と、生徒たちのリーダー・ウスキによる
    男勝りなボタンへの片想い(と、まんざらでもないボタン)の対比が可愛らしかったです。

    まっつんの役柄は、自衛隊の洗柿(あらいがき)陸士長。流石は元陸自なだけあって、
    前半部分では所作・動作の美しさが光っていました。
    ぶっちゃけ、それだけの為にキャスティングされた端役かと思っていたのですが・・・
    本当にスミマセン、そんな決めつけをしていた私が馬鹿でした。
    まさか、後半の怒涛の展開を呼び寄せる恐ろしいキャラクターだったとは・・・。

    物語は、子供たちそれぞれの独白を挟みながら少しづつ進んでいきましたが、
    訓練も佳境を迎えたところで、歯車が狂い出していきます。
    生徒のなかに潜んでいたスパイ。「ミカンとキリン」というキーワード。
    ハジゾメが左目を失った事故をきっかけに和が乱れかけた生徒たち。
    そして子供を相手にすることに対して様々な感情を持っていた自衛隊メンバーの中で
    口火を切ってしまった洗柿と、蘇芳の甘い口車に乗ってしまった千草三等陸曹。
    事故から立ち直ろうとしていた生徒たちを悲劇のクリスマスが襲う・・・という展開でした。

    とにかく圧倒されたのは、物語で描かれた美しさと汚さの絶妙な対比。
    ただ残虐なだけでなく、鬱屈が積もった上での凶行だったり、想いが行き過ぎてしまったり、
    本当に悲しい哀しいストーリー展開でした。
    そのなかで言葉遊びがあったり、登場人物の名前があるもので統一されていたりと
    ニヤリとさせられる部分もあったりして、改めてヨコオワールドの深さに気づきました。

    個人的に好きだったシーンは、ツツジと木賊一等陸士(とぐぴょん)との間に目覚めた
    奇妙な友情と、悲劇的なふたりの幕切れです。
    新橋先生以外では唯一歩み寄りかけた「子供と大人」だったのに、ああいう形で
    無残に踏みにじられてしまい、暗転後の陰マイクが涙なしでは聞けませんでした。

    勿論、洗柿の狂気も恐ろしかったです。生徒たちに対して笑いながら発砲し、殺しを楽しむ。
    そんな糞っぷりに反吐が出ました。そのくらい、迫真のまっつんの演技でした。
    でもそんな洗柿が頭を潰されて死んでも、決してスカッとはしない虚しさ。
    ここに、「勧善懲悪」とは違う重いテーマがのしかかっていると思います。

    大人たちの罠によって命を落としてしまった多くの生徒たち。
    そして生き残った子たちも「人を殺す重み」を知ってしまった。
    それが、恐らく原作漫画へと繋がっていくのでしょう。
    悲劇を終わらせる為に死ぬしかなかったサクラとハクジが、死の瞬間にようやく
    想いを遂げて安らかな表情をしていたことだけが、唯一の希望でした。

    大人たちはといえば・・・研究所で恐ろしい指令を無表情で出していた女ボス・赤住が
    実は背に腹を代えられないバックボーンを持っていたり、
    良心として描かれていた新橋先生や女性オペレーター・刈安が、
    それぞれ死の決断をするまでの悲痛な心情が苦しかったり、本当に見応えがありました。
    物語のラストシーンまで下衆を貫いた蘇芳の、気味の悪い存在感も凄かったです。

    結局、大人も子供もみんな、心のなかにそれぞれ、強いつよい「正義」を持っていたのです。
    善いか悪いか、ではなく「正義」。
    その正義のために生きて、正義のために死んで。
    たまたま生き残った者だけが、それを受け継いだだけなんじゃないか・・・と
    個人的には思いました。

    そのほかにも、舞台を観劇したたくさんの方がTwitterで感想や考察をつぶやいています。
    ハッシュタグ『#君死ニ』でいろんな意見を拝見できるのが、本当に楽しいです。

    観劇後、気が付いたら右目だけ涙を流していました。もう本当に無感情のまま。
    こんなこと初めてだったので少々戸惑っていたのですが、その後怒涛の展開が。
    3回目のアンコールで誰ともなく席を立ちはじめ、スタンディングオベーションになったり。
    実は会場にヨコオさんがいらしていて、ご尊顔を拝見してしまったり。
    (※注:普段メディアに出る際のヨコオさんは、エミールのマスクをしてらっしゃいます)

    いろいろと、普段体験できないことを経験してしまいました。
    まっつん、キャストの皆様、演出の松多さん、スタッフの皆様、ヨコオさん、
    あの場で最初に立ってくださった方、他にも沢山の皆様、本当に有難うございました。

    『君死ニタマフ事ナカレ零』公演グッズ

    決して年末の浮かれモードで観る作品ではないけれども、
    いいお芝居を見せて戴きました。

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